離婚後の家、住宅ローンが残っていても売れる?オーバーローン時の任意売却と財産分与の考え方

この記事でわかること
- 住宅ローンが残る家でも、残債より売却額が高い「アンダーローン」なら通常どおり売却でき、残債より売却額が低い「オーバーローン」でも、金融機関の同意があれば「任意売却」という方法で売却できる
- 財産分与の対象になるのは、売却額で残債を完済してもなお残る「プラスの価値」の部分のみ
- 住宅ローンの支払い義務は名義人にあり、連帯保証人・連帯債務者の立場は離婚しても自動的には解消されない
- 財産分与を請求できる期間は、2026年4月1日施行の民法改正で離婚時から2年→5年に延長された(同年3月31日までの離婚は従来どおり2年)
離婚を考えたとき、多くのご夫婦がまず気になるのが「住宅ローンが残っている家をどうするか」ではないでしょうか。子育て世代の持ち家取得も多い福井市では、離婚に伴う自宅売却のご相談も珍しくありません。ただ「ローンが残っていたら売れないのでは」と思い込み、相談そのものを先延ばしにしてしまうケースも見受けられます。今回は、住宅ローンが残る家を離婚時に売却する際の基本的な考え方と実務の流れを、実務経験にもとづいて解説します。なお、個別の分与割合の算定や、既に対立が生じている当事者間の交渉については、本記事の範囲を超えるため弁護士へのご相談をおすすめします。
まず「オーバーローン」か「アンダーローン」かを確認する
住宅ローンが残る家の売却を考えるとき、最初に確認すべきなのが残債と売却見込み額の関係です。
- アンダーローン:住宅ローンの残債より、家を売却して得られる金額の方が高い状態。売却代金でローンを完済し、残った差額が財産分与の対象になります
- オーバーローン:住宅ローンの残債の方が、売却見込み額より高い状態。売却代金だけではローンを完済できません
| 項目 | アンダーローン | オーバーローン |
|---|---|---|
| 残債と売却額の関係 | 売却額の方が高い | 残債の方が高い |
| 売却の進め方 | 通常の売却活動 | 金融機関の同意を得て任意売却 |
| 完済後の扱い | 差額は財産分与の対象 | 原則、財産分与の対象外(マイナスの負債) |
残債額は、金融機関から毎年送られる「残高証明書」やインターネットバンキング、あるいは金融機関への直接照会で確認できます。売却見込み額は、不動産会社の査定を受けることでおおよその目安がつかめます。査定を受ける際の具体的な流れは査定の流れと準備するものでも解説していますので、あわせてご確認ください。
パターン別・売却の実務フロー
アンダーローンの場合
通常の売却活動と同じ流れで進められます。売却代金で住宅ローンを一括完済し、抵当権を抹消したうえで買主に引き渡します。完済後に残った金額が、財産分与の話し合いの対象です。原則として2分の1ずつとされることが多いですが、実際の按分は夫婦それぞれの事情によって変わるため、具体的な割合の算定は弁護士にご相談ください。
オーバーローンの場合(任意売却)
売却代金だけでは完済できない場合でも、金融機関(債権者)の同意を得られれば、通常の不動産市場で売却する「任意売却」という方法があります。競売にかけると市場価格の5〜7割程度でしか売れないことが多いため、金融機関にとっても任意売却の方が回収額を確保しやすく、同意が得られやすい傾向にあります。
- ①金融機関へ相談:ローンの支払いが厳しい、または離婚を機に売却したい旨を伝え、任意売却の可否を確認します
- ②任意売却の実務に詳しい不動産会社に依頼:金融機関との調整や書類のやり取りに慣れた業者に相談すると、手続きがスムーズです
- ③通常の市場で売却活動:一般の売却と同様に、内見対応や条件交渉を行います
- ④売却後、残った債務の返済方法を金融機関と相談:分割払いなど、無理のない返済方法について合意を目指します
オーバーローンの場合、売却代金で完済しきれない部分は「財産」ではなく「マイナスの負債」であるため、原則として財産分与の対象にはなりません。
「うちの家はオーバーローン?アンダーローン?」まずは今の評価額を知ることから
実務上、特に注意しておきたい2つのポイント
連帯保証人・連帯債務者の関係は、離婚では解消されない
住宅ローンの支払い義務を負うのは、家の名義人や実際に住んでいる人ではなく、あくまで「住宅ローンの名義人」です。夫婦のどちらかがペアローンや連帯債務でローンを組んでいた場合、離婚して家を出た後も、連帯保証人・連帯債務者としての立場は自動的には解消されません。相手が返済を滞らせれば、自分に請求が及ぶ可能性があります。ペアローンの仕組み自体については住宅ローンの組み方入門でも触れていますので、こちらもご参照ください。
財産分与を請求できる期間が2年→5年に延長された(2026年4月1日施行)
財産分与を請求できる期間には、これまで「離婚のときから2年」という期限(除斥期間)がありました。2026年4月1日に施行された改正民法により、この期間が「離婚のときから5年」に延長されています。ただし経過措置があり、2026年3月31日までに離婚が成立している場合は従来どおり2年が適用されるため、ご自身の離婚時期がどちらに該当するかは注意が必要です。「まだ財産分与の話し合いが済んでいない」という場合でも、以前より時間的な猶予ができたことになりますが、具体的な期限の判断や請求手続きは弁護士にご確認ください。
現場でよくある失敗例と対策
- 失敗例1:家を出た側が「もう自分には関係ない」と思い込み、連帯保証人の立場のまま何年も放置してしまい、後になって金融機関から督促の連絡が来て初めて事態に気づいた
- 失敗例2:感情的な対立からローンの支払いが滞り、任意売却の相談すら間に合わないまま競売になってしまった
- 失敗例3:財産分与の合意を口約束だけで済ませてしまい、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展した
こうした失敗を避けるための対策は次の3点です。
- ローン契約の名義・連帯保証人の状況を、金融機関に改めて確認しておく
- 返済が厳しいと感じた時点で、できるだけ早く金融機関や不動産会社に相談する(滞納が進むほど選択肢が狭まります)
- 財産分与や売却に関する合意内容は、口約束で終わらせず、離婚協議書や公正証書などの書面に残しておく
まとめ
- アンダーローンなら通常の売却で完済+財産分与、オーバーローンでも金融機関の同意があれば任意売却が選べる
- 連帯保証人・連帯債務者の立場は、離婚しても自動的には解消されない
- 財産分与を請求できる期間は、2026年4月1日施行の改正で2年→5年に延長(経過措置あり)
- 個別の分与割合の算定や、金融機関・相手方との具体的な交渉は、弁護士など専門家への相談をおすすめします
住宅ローンが残っているからといって、売却の選択肢がなくなるわけではありません。まずは今の家がアンダーローンかオーバーローンか、査定を通じて現状を把握することが、次の一歩につながります。春山不動産では、こうした事情のあるご売却についても、状況に配慮しながら丁寧にご相談を承っております。
離婚に伴う売却では、買い手を探す時間をかけずに早く確実に現金化したいケースも少なくありません。そうした場合は、当社が直接買主となる「不動産買取」も選択肢の一つです。
住宅ローンが残っている家の売り方(完済の流れと手取りの計算)は、住宅ローンが残っている家を売るには?で解説しています。

福井市の不動産査定・売却のご相談
この記事を書いた人:代表者 間 麗 (はざま あきら)
福井市の「春山不動産」代表。不動産業界歴20年の知見を活かし、不動産売買・賃貸の仲介から、管理、コンサルティング、相続・空き家・建物解体、住宅ローンのご相談まで、一人ひとりに寄り添い手厚くサポートいたします。
デリケートなご事情も、まずは無料査定からご相談ください


