相続した家が「共有名義」で身動きが取れない。売却までの実務と対処法

この記事でわかること
- 共有名義の不動産を「まるごと」売却するには、共有者全員の同意が必要な理由
- 自分の持分だけであれば、単独で売却できる仕組みと、その場合の注意点
- 共有者どうしで意見がまとまらないときの対処法(共有物分割請求訴訟など)
- 共有者と連絡が取れない・行方不明の場合に使える、2023年改正民法の新しい制度
「実家を相続したが、兄弟で共有名義のままになっていて売るに売れない」——福井市内でも、こうしたご相談は少なくありません。共有名義の不動産は、名義人の一人が「売りたい」と思っても、それだけでは話が進まないことがあります。今回は、共有名義の不動産を売却する際の基本ルールと、意見が割れた場合・連絡が取れない共有者がいる場合の対処法を解説します。
そもそも共有名義とは?なぜ相続で共有になりやすいのか
共有名義とは、1つの不動産を複数人でそれぞれの「持分」に応じて所有している状態のことです。相続では、遺産分割協議がまとまらないまま「とりあえず法定相続分で共有登記する」というケースが多く、これが後々の売却トラブルの原因になりがちです。共有登記そのものは相続登記の一種として有効ですが、将来の活用・処分の自由度が下がる点に注意が必要です。相続登記の期限については実家の相続登記まだですか?猶予期限は2027年3月31日もあわせてご覧ください。共有不動産特有のリスクについては福井市で増える「相続不動産」のご相談でも解説しています。
不動産「全体」の売却には共有者全員の同意が必要
共有不動産をまるごと第三者に売却する行為は、民法上「変更・処分行為」にあたり、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。共有者のうち1人でも反対する、あるいは連絡が取れず意思確認ができないと、原則として売却手続きは進められません。共有者の中に認知症などで判断能力が十分でない方がいる場合は、成年後見制度が必要になることがあります(成年後見制度を使った売却の流れ)。
一方で、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なく単独で売却することができます(民法206条)。ただし、持分だけを購入したいと考える第三者は一般には限られ、買い手の多くは共有持分専門の買取業者になります。その結果、市場価格より低い金額での売却になりやすい点には注意が必要です。
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共有者の意見がまとまらないときの対処法
「売りたい人」と「売りたくない人」で意見が割れている場合、次のような選択肢があります。
① まずは話し合いで足並みを揃える
最も現実的なのは、売却の必要性(維持費・固定資産税の負担、将来的な資産価値の低下リスクなど)を共有者間で共有し、話し合いで合意を目指すことです。査定を取って具体的な金額を示すことで、話し合いが前進するケースも多くあります。
② 共有物分割請求訴訟を起こす
話し合いで解決しない場合、家庭裁判所ではなく地方裁判所に「共有物分割請求訴訟」を起こすことができます。判決や和解では、主に次の3つの方法のいずれかで解消が図られます。
- 現物分割:土地を物理的に分筆し、それぞれ単独名義にする方法(建物では難しいことが多い)
- 代償分割:共有者の1人が不動産を取得し、他の共有者に代償金を支払う方法
- 換価分割:不動産を売却(任意売却または競売)して、代金を持分に応じて分ける方法。実務上、最も採用されやすい方法です
訴訟という言葉に身構える方も多いですが、実務上は判決まで争わず、途中の和解で解決するケースが多いとされています。とはいえ、どの方法が現実的かは個別の状況によって大きく異なるため、弁護士への相談をおすすめします。
③ 持分だけを買取業者に売却する
前述の通り、自分の持分だけであれば単独で売却できます。「早く関係を清算したい」という場合の選択肢にはなりますが、市場価格より低い金額になりやすい点はあらかじめ理解しておく必要があります。
共有者と連絡が取れない・行方不明の場合
共有者の中に、連絡先が分からない・長年音信不通になっている方がいる場合、2023年4月に施行された改正民法により、新しい2つの制度が使えるようになりました。
- 所在等不明共有者の持分取得制度(民法262条の2):裁判所への申立てにより、所在が分からない共有者の持分を、他の共有者が取得できる制度
- 所在等不明共有者の持分譲渡制度(民法262条の3):所在が分からない共有者以外の全員が同意すれば、その共有者の持分を含めて不動産全体を第三者に売却できるよう、裁判所から権限の付与を受けられる制度
以前は、行方不明の共有者がいると不在者財産管理人の選任など時間のかかる手続きが必要でしたが、この新制度により、一定の手続きを経れば売却まで進められる道筋が明確になりました。ただし、裁判所への申立てや公告の手続きが必要になるため、該当しそうな場合は早めに弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。
現場でよくある失敗例と対策
これまでのご相談の中で、実際によくある失敗パターンをご紹介します。
- 失敗例1:「そのうち話し合えばいい」と共有名義のまま放置しているうちに、共有者の1人が亡くなって次の代にさらに共有者が増え、話がまとまりにくくなった
- 失敗例2:共有者の1人と連絡が取れないまま数年が経過し、売却の機会を逃してしまった
- 失敗例3:持分だけを買取業者に売却したところ、想定より大幅に低い金額になり後悔した
こうした失敗を避けるための対策は次の3点です。
- 共有名義になった時点で、将来どうするか(誰かが住む・貸す・売る)の方向性を早めに話し合っておく
- 連絡が取れない共有者がいる場合は、放置せず早めに弁護士・司法書士へ相談する
- 持分だけの売却を検討する前に、不動産全体としての査定額を把握しておく
実家を手放すことに気持ちの迷いがある方は、実家を売るのは悲しい…と迷う方へ|気持ちの整理と、後悔しない進め方もあわせてご覧ください。
まとめ
- 共有不動産をまるごと売却するには共有者全員の同意が必要。自分の持分だけなら単独で売却できるが、価格は下がりやすい
- 意見がまとまらない場合は、話し合い→共有物分割請求訴訟(現物分割・代償分割・換価分割)という流れで解消を目指す方法がある
- 連絡が取れない共有者がいる場合も、2023年改正民法の新制度で解決の道筋が広がった
- いずれの対処法も個別の事情で最適解が変わるため、早めの相談が肝心
共有名義の売却手続きそのものは弁護士・司法書士の領域になりますが、「今の状態でどのくらいの価値がある不動産なのか」「共有者間の話し合いをどう進めればいいか」といったご相談は、私たちにもお気軽にお尋ねください。まずは無料査定で、不動産全体の状況を把握することから始めてみませんか。

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この記事を書いた人:代表者 間 麗 (はざま あきら)
福井市の「春山不動産」代表。不動産業界歴20年の知見を活かし、不動産売買・賃貸の仲介から、管理、コンサルティング、相続・空き家・建物解体、住宅ローンのご相談まで、一人ひとりに寄り添い手厚くサポートいたします。
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